2017年3月21日(火)、小高生涯学習センター「浮舟文化会館」にて、「第3回小高の復興に向けた定例会」を開催しました。
日頃、小高において復興に向けた取り組みや地域づくりにご尽力されている行政区長連合会、小高区地域協議会、JAふくしま未来農業協同組合、小高商工会の関係者の皆様にご出席いただきました。関心をもっていただいた方々にも、傍聴にいらしていただき、ありがとうございました。
小高復興デザインセンターから、「第2回小高の復興に向けた定例会」開催以降の活動や、今年度の活動を通して把握した小高区のコミュニティ再生に向けて、取り組むべき課題と、来年度の活動方針について報告を行いました。出席者の皆様からは、小高の現状や市の取組みに対する議論がなされるとともに、センターの活動に対するご意見を頂きました。
来年度、市として小高区の復興のビジョンづくりを実施する予定で、センターの活動は、そうした中にも反映されていきます。
1. 12月以降の活動報告
日々多くの方にご来館いただき、平均週24名が来所されています。大学教員や学生の来所も多く、そこを活かして連携や協働をしていかなければならないと考えています。様々な相談の窓口となっています。いくつか抜粋してご紹介します。
・解体が進んでおり、昔の町並みや建築物を活かすまちづくりをしてほしい。
・自分の土地で太陽光発電、風力発電を検討したい。
・市として避難指示区域の今後についてどう考えているのか。市として国に意見を言ってほしい。
・イベント時のメッセージ集へメッセージを寄せていただける方を紹介してほしい。
・農業再生の模索をしている。小さくとも成功事例を作っていくことが大切。
・行政区の再編はどうなっているのか。
・送迎だけでは食べていけないが、続けたいので、事業のよい回し方はないか。
・大学と共同研究しているが、汚染水をエネルギーに変える事業で地元と協働したい。
・宿泊業をしていたが、戻る準備をしている。どういう需要があるか。
センターでは「多様な主体との協働・実践に向けた活動」、「知識や情報、課題の蓄積と発信」を2本の柱として活動しています。いくつかご紹介します。
1月は、さくらサロンの第3回目がありました。毎月2回継続して実施しています。福島県立医科大の協力を得てヨガを行いました。
また、研究者の方々などの要望があり、現地を案内をしました。1月、2月は視察が多くありました。
2月は、まちなか部会とつながり部会の双方の議論を受けて、空き地を菜園にするというアイディアが実践として始まりました。東町の災害公営住宅団地の敷地内で、空地を菜園とする実践を災害公営住宅の住民と協働して開始しました。その様子は「はたけ通信」として、災害公営住宅団地各戸に配布しており喜ばれています。
また、第1回なりわい部会を実施しました。農業を再開している方々や市担当職員等と、小高の農業をめぐる現状と新たな展望や課題について共有し、議論を行いました。
3月は、浦尻行政区の今後のプランづくりを区長、次期区長にご相談しました。今年度、センターでは浦尻の住民の皆様にも協力を得ながら、主に現状把握の調査を行ってきました。今後は一歩進めて、行政区と協働で計画づくりを実行していく予定です。
また、第3回まちなか部会を開催しました。空き家の活用策をテーマに、商業と居住の間に位置する、宿泊・滞在場所としての活用をセンターが提案して議論しました。また菜園プロジェクトの実践状況も報告しました。
(個別の活動については、HPのこれまでの記事を御覧ください)
2. 今年度の到達点と今後の課題
小高復興デザインセンターでは、「まちなか」「生業」「つながり」「災害リスク」というテーマごとに協働の場「部会」を設けています。さらに、部会で議論・検討された内容を踏まえて、行政区ごとに復興に向けたプランづくりを進めています。今年度は、活動を通してコミュニティ再生に向けて、センターが取り組むべき課題の把握を行ってきました。以下、概要をご説明します。
①まちなか部会
3回の部会、各種インタビュー調査等を行いました。
課題1:空き地・空き家の管理及び運営
相当数の空き地や空き家の発生が見込まれるが、それらの有効活用を支えるバンクのあり方、多様な活用の実現と担い手の確保、所有者が管理できない場合の対応の検討が必要です。菜園プロジェクトは空き地活用の一例でもあります。
課題2:歴史的建築物の保全及び活用
小高の街は、災害を乗り越え、次へ引き継ぐ象徴であり、観光の資源です。住民の価値の認識、保全活用への策が必要です。今年度は高島家蔵を利用したイベントを協働で実施しました。
部会での議論で、方向性を行政区長等出席者と共有できた。さらに空き家の活用、歴史的建築物の保全活用を広げていきたいと考えています。
②つながり部会
2回の部会、サロン立ち上げの支援、サロン等への参加、各種インタビュー調査を行いました。
課題1:つどいの場づくり
課題2:地域の足の確保
他大学との連携体制も構築できつつあり、今後、上記課題への対応と、引き続きサロン立ち上げ支援等を行っていきたいと考えています。
③なりわい部会
1回の部会、各種インタビュー調査等を行いました。
課題1:営農再開と遊休地農地管理
課題2:事業再開と継続と新たな生業の創出
部会で課題1を共有しました。土地の管理方法等について検討し、意向の把握を行う必要があります。また、新たな生業の創出に向けた実践を模索していきます。
④災害リスク部会
2回の部会を講師を招くコラボ講話として実施しました。
課題1:リスクの正しい可視化
課題2:災害リスクとまちづくりの連動
リスクを踏まえた上で、土地利用や地域づくりの検討が必要です。
来年度は講演等は市が担うべきものと考え、センターとしては、災害リスクを踏まえた地域づくりを、行政区の方と共に、具体的に取り組みたいと考えています。
⑤行政区での取組みを通した課題の把握
浦尻、上浦、川房でインタビュー調査、空間調査、地域行事への参加や意見交換、成果発表などに取り組んできました。課題を3点に整理しました。
・コミュニティの維持や居場所づくり
・生活環境の維持・改善
・生業の回復・土地や家屋の管理
センターとしては、コミュニティ再生に向けた帰還されない方や含めたサロン等のつながり作りの支援、地域特性に応じた土地利用や維持管理の方法を住民の方々と検討していきます。
出席者からは、復興における行政の適切な介入やリーダーシップの必要性、行政区での課題を影響する隣接する行政区とも共有していくこと、放射線測定の適切な単位の使用、空き家空き地バンクの周知方法の再考、空き地、農地の活用、管理の仕組みづくりの必要性等のご指摘をいただきました。
3. センターの取り組みと今後に向けて
続いて、上記の課題を基に、センターの今後の活動について、センターの考えを示し、議論しました。
2016年7月開所以来、センターでは地域コミュニティの再生を基本的目標として、活動してきました。避難指示解除を迎えた小高における課題の把握は非常に重要であるという認識のもと、部会や行政区単位でのまちづくりを通じて、理解を深めてきました。また、その対応策を検討すると同時に、特に、協働の仕組みの構築という点から意義が大きい実践を試みています。実践の現場でこそ、より有益で有効で総合的な意義のある取組みの方法がわかってくると考えているからです。
2016年度の活動をふまえて、2017年度は課題の把握を継続しつつも、実践や行政区単位のまちづくりに重きをずらし、以下の論点を深める必要があると考えています。
論点1:土地の適切な維持管理
被災前まで、敷地や農地、公共空間は、1)所有者による維持管理、2)行政区単位での人足、3)農業酪農などの生業や関連する共同作業などによって、適切に維持管理されてきました。被災を経て、津波や放射能汚染があり、一度は居住者がゼロになり、避難指示は解除されたものの人口の減少と高齢化が進行しています。
こうした状況において、生活環境の適切な維持管理が求められています。そのためには、行政区単位などで住民の方々と共に、土地に対する考え方や維持管理の実態を把握し、土地の利用秩序を検討し、共有し、実践していく必要があります。土地の所有と管理についての意識転換を図り、ひいては、モデルケースを作り、小高区全体に展開することを想定しています。
その結果として、美しい小高の風景を取り戻すことを目指します。
論点2:多様な交流・滞在・宿泊・居住の実現
被災は、小高区民にも外部者にも非常に多様な状況をもたらしました。健康状態や世帯構成は6年前と変化しています。そのため帰還者が被災前の暮らしを営むには多様な支援が必要になっている場合が多くなっています。また、原町など近くに住み日中に営農する方や、お墓参りなどには欠かさず帰る方など、帰還していない方と小高の付き合い方は様々です。被災を契機に小高を知り、新たな生業にチャレンジするために中期居住したい方、復興ツーリズムや研究者・大学生などの短期宿泊のニーズもあります。
現在、そうした実態は、それぞれの方の自助によって実現していますが、空き家なども活用した多様な住まい方、交流を可能にするサロンなどの集まる場の創出維持や地域交通の確保などを通じて、小高との関わり方を、今後、より豊かで確実なものにすべきと考えています。
帰還者の豊かな暮らし、非/未帰還者とふるさと小高のつながり、外部者が小高の復興に貢献できる機会や場が重要であり、そのためには次の1年で多様な交流・滞在・宿泊・居住の実現が重要です。サロンの創出維持、地域交通の確保、空家空き地の活用の協働の仕組みは、帰還者のみならず、様々な人を支え、惹きつけることになります。
論点3:協働の仕組みの構築
自助の萌芽を育み、軌道に乗るまでの支援として、場づくりや関係主体のマッチング、関連する事業制度の紹介などが欠かせず、情報発信/伝達が非常に重要です。センターでは、これまで「小高志」やウェブサイトを中心に行ってきたが、なかなか難しくご意見をいただきたいです。実態報告、調査結果、先行の取り組みの分析などの発信に重点を置いて行っていきたいと考えています。今後はこれまでに築いた人的ネットワークを活かした有益な情報共有も図りたいと思います。
また、様々な公助は用意されているが、その有効性を利用者の方にインタビューするなどして整理し、特に、行政区単位のまちづくりを支える公助のあり方を探ります。
さらに、実践の現場に関わることで、まちづくり事業体の構築や大学研究の成果を活かした取組みによる地域の課題を解決していく方法を整理します。
以上の小高復興デザインセンターからの説明を踏まえて、出席者の皆様から小高の復興に向けた協働のまちづくりに関する議論を行いました。
家族内での深刻な分断もあるとの指摘の中で、行政区で集まる機会を作っている取り組みや外から訪れる方との交流の機会の紹介があり、「外からここで努力したい方には、住まう支援をすることが必要」、「戻る人も戻らない人も繋がりが重要で、お互いがんばりたい」、「生産活動で人を繋ぐというのを実践したい」、「土地の維持管理を復興組合だけでなく、住民全体で支えていく状況づくりが重要」などのご指摘をいただきました。
こうした議論をもとに、協働のまちづくり、小高復興デザインセンターの活動をより有意義なものとしていきます。