ご報告が遅くなってしまいましたが、2016年11月に、「小高で暮らすためのコラボ講話」と題し、第1回・第2回災害リスク部会を開催しました。各会ともお二人の専門家に講演いただき、そのあとに気軽に質問や議論ができる場を開催しました。合わせて約90人の方にご参加いただきました。
災害リスク部会では、原発と津波の複合被災地域である小高で暮らすために、多様なリスクへの適切な対応のあり方を構築することを目指しています。現在は小高における様々な災害リスクのうち、特に放射線のリスクについて、専門家を交えた話し合いの場を開催し、現在の暮らしや地域の将来像の構築につなげようとしています。
▲ 第2回災害リスク部会の会場の様子
第1回目(11月8日)は「原発被災と生活リスク」と題し、福島県立医科大学の村上道夫准教授と東京大学の森口祐一教授をお招きし、講演の後、質疑応答、議論を行いました。
講演では、リスクコミュニケーションが専門の村上先生からは、原発事故によって生じた様々なリスクを把握し、対処していくことの重要性が指摘されました。放射線被曝のリスクだけでなく、例えば生活習慣病である糖尿病のリスクが原発事故後に増加しています。みんなで適度な運動をする機会を作る、バランスのとれた食生活をする等が大切です。
環境システム工学が専門の森口先生は、原発事故による放射性物質の拡散や除染について、現在わかってきたことを話されました。除染の可能性と限界を踏まえつつ、地域の将来像を描き、それに応じた措置を行い、そのプロセスに住民が十分に関与することが必要であるということです。
参加された方々からは、産業も含めたこれからの地域の在り方、放射線防護の基準値、小高の川の除染の実態、道路脇に放置されたゴミの片付け、専門家の意見のばらつき等について、質問、議論がありました。
第2回目(11月20日)は「小高での暮らし」と題し、東京大学の児玉龍彦教授とNPO法人チェルノブイリ救援・中部理事の河田昌東先生をお招きし、講演の後、質疑応答、議論を行いました。
システム生物医学が専門の児玉先生は、南相馬市除染推進委員会の委員長でもあり、この5年間の取組について話された後、今後は放射性廃棄物から放射性物質を取り除き、リサイクルしていくことが重要であると話されました。
河田先生は、2011年4月から南相馬市に通われています。南相馬放射能測定センター(とどけ鳥)を中心とした市民によるモニタリング活動を通じて明らかになった、小高の空間線量と作物の汚染について話されました。汚染しやすい作物としにくい作物があること、農作物栽培時の注意点、作物の放射線量は必ずしも単調に減少し続けているわけではないこと等を指摘されました。今後も継続した測定が必要です。
その後、参加された方々からは、小高で農業をやる上での課題、焼却炉や廃棄物運搬についての不安、住民の声が届く仕組みづくり等について、質問、議論がありました。
当日の講演、質疑応答の内容と、質疑応答のフォローアップについては、今後改めてウェブサイトでご報告する予定です。